高齢化が進む現在の日本で、
年齢によって肺移植の機会が
失われています。
いま、日本では“人生の半ば”で
脳死肺移植ができなくなります。
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脳死肺移植の制限年齢※ともに登録時
現在、日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性81.09歳※1。それに対して、脳死移植は早い段階から年齢制限が行なわれています。肺移植の場合、55歳未満(両肺移植の場合)と60歳未満(片肺移植の場合)。これは、移植を正式に希望し登録する時点での年齢です。この時までに登録していない場合、それ以降にどれだけ重い病気になっても脳死移植は受けられないのが日本の現状です。一方、海外ではこのような年齢制限は一般的ではありません。例えば米国では肺移植待機患者の30%は65歳以上とも言われています※2。世界で最も高齢化が進む現在の日本で、55歳や60歳はいわばまだ人生の半ばです。この年齢で移植の機会が失われるのは、社会の大きな課題と言えます。
※1 厚生労働省2023年調べ
※2 メデイカルレビュー社発行 THE LUNG-perspectives 2019年秋号より
間質性肺炎と慢性閉塞性肺炎(COPD)の死者、
年間計4万人以上。
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年間死亡数※1
日本には間質性肺炎や慢性閉塞性肺炎(COPD)で亡くなる方が非常にたくさんいらっしゃいます。その数、合計で実に年間4万人以上。特に間質性肺炎は、現在日本人の死因の11位、男性に限れば9位です※2。間質性肺炎は50代~70代に多く見られ、「特発性」と呼ばれる原因不明のケースが多い病気です。COPDはタバコの煙や大気汚染などの有害物質を長期間吸い込むことで生じる病気の総称で、代表的なものに肺気腫があります。ともに治療が難しく、一度発症すると進行を遅らせるのみで完治は見込めないという例が少なくありません。根本的な治療法は肺移植ですが、現状では年齢制限を超えるとそれも望めません。ご高齢での発症も多く、気づいた時には脳死移植の対象外だったという方も多いのが実情です。完治への選択肢がないまま、急性増悪(急激な症状の悪化)への不安を抱えて暮らす方がたくさんいらっしゃいます。私たちは、こうした方々に新たな治療の可能性をご提供いたします。
※1 2023年実績:厚生労働省 令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況より
※2 東京新聞 2024年4月2日記事より
「脳死肺移植」の
年齢制限を超えた方へ。
「生体肺移植」という
選択肢があります。
東京大学医学部附属病院
呼吸器外科と連携。
現在の制度が
カバーできていない方へ、
「生体肺移植」という希望を。
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私たちは、移植以外に回復の見込みがないにも関わらず、年齢制限で脳死肺移植を受けられない方を東大病院呼吸器外科へご紹介します。世界でもトップレベルの専門家による生体肺移植を受けることができます。
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東大病院生体肺移植の3つの特長
生体肺移植では、移植施設ごとの年齢基準が認められています。東大病院の場合「65歳以下」が原則ですが、特例として心身の状態によりそれ以上の年齢で移植が行なわれることもあります。
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肺移植手術は、呼吸器外科医、心臓血管外科医、麻酔科医、臨床工学技士など30名にも及ぶスタッフがチームを組んで行ないます。東大病院では各分野に世界的に見ても高水準な知見を持つ人材が揃っており、最高レベルの手術を受けることができます。
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肺移植は手術を受けて終わりではなく、むしろ、「移植後」の日常生活こそが本番です。ご紹介元の主治医の先生とも連携し、一生涯サポートし続けるのでご安心いただけます。
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東京大学大学院医学研究科 呼吸器外科学 / 東京大学医学部附属病院 呼吸器外科
佐藤雅昭 教授 / 診療科長
生体肺移植とは
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肺移植には、「脳死肺移植」と「生体肺移植」の2種類があります。脳死状態の提供者から移植を行なう脳死肺移植に対し、生体肺移植では2人の健康な親族の方からそれぞれ肺の一部分をご提供いただき移植を行ないます。移植後の生存率は、脳死肺移植とほぼ同じです。現在、世界的に見ても移植の主流は脳死移植です。しかし、移植希望者数に対して臓器の提供数が足りない日本では、現実的な解決策として生体移植が一定の役割を担い続けています。
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2人のご親族から肺の一部を移植
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移植後の生存率
5年生存率
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東大病院の肺移植手術は、5年生存率が71.5%となっています。この数字は、5年生存率が90%を超える心臓・腎臓の移植や、80%を超える肝臓の移植に比べ低く感じるかもしれません。これは肺が他の臓器と違い「外界にさらされた臓器」であり、呼吸を通じて細菌やウイルスに侵入されやすいこと、他の臓器より免疫抑制剤を多く使うため感染症にかかりやすくなることなどに由来します。
世界の成績と比べると東大病院の数字は極めて高く、その技術の高さがわかります。肺移植が難しい手術であることは事実ですが、移植した肺が機能すれば呼吸の苦しさから解放され日常生活を取り戻すことができます。実際、たくさんの方が社会復帰され充実した人生を楽しんでいらっしゃいます。
生体肺移植をご経験した方の声
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Kさん
(レシピエント・移植時66歳)間質性肺炎を患っていた私は、インフルエンザの回復直後に急性増悪となり死の淵をさまよいました。病床で家族や仕事関係者を呼び相続などの解決を図った上で、生き延びる方法を探しましたが見つかりませんでした。そのとき佐藤教授と繋がることができ、移植を受けることができました。手術後は、半年で旅行やゴルフができるまで健康な状態に戻りました。今はもっと早いうちに手術を受けておけばとふと思ったりします。死を考えたりする前に。
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Nさん
(ドナー・移植時37歳)長年苦しんでいた父の姿を見ており、自分の肺で父が健康に過ごしているのを見ると、臓器提供を決断して本当によかったと感じます。移植後は1週間で退院し、8日目からリモート勤務を再開、14日目からはフルタイムで働くことができました。2か月後からは運動を再開し、半年たった今では呼吸機能は8割まで戻った感覚でゴルフやサッカーを再開しています。日常生活で支障を感じることはほとんどなくなりました。
N28がサポートする
生体肺移植の条件
レシピエントの条件
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臓器移植を受ける方を「レシピエント」、臓器提供者を「ドナー」と呼びます。肺移植は次の条件を満たす重い症状の患者さんに行なわれます。
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肺移植の条件
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現在の医療で肺移植以外に有効な治療法がない。
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生命の危険が迫っている。(2年生存率が50%以下)
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肺移植によって元気になることが予想される。
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レシピエントには、心身の状態などさまざまな適応条件が定められています。(※除外条件、適応疾患の種類など、詳しくは主治医の先生にご確認ください)
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レシピエントの条件
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精神的に安定しており、移植医療の必要性を認識し
これに対して積極的な態度を示すとともに、
家族及び患者をとりまく環境に十分な協力体制が期待できる。 -
移植手術後の定期的検査と、
それに基づく免疫抑制療法の必要性を理解でき、
精神的・肉体的に十分耐えられる。
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ドナーの条件
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レシピエントとの関係
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年齢(原則)
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日本移植学会では現在、生体移植全般の指針として、ドナーは「レシピエントの6親等内の血族、配偶者と3親等内の姻族」に限ると規定されています。東大病院では、生体肺移植のドナーは「配偶者または3親等以内の血族」を原則とし、それを超える場合はドナーとレシピエントの関係性の強さを考慮し個別に判断されます。年齢は、20歳以上60歳以下を原則としています。従来は血液型にも条件がありましたが、近年は免疫抑制治療等を行なうことで血液型に関係なく移植が行なえるようになりつつあり、移植の可能性は広がっています。なお、ドナーは自らの意志で臓器をご提供くださる方に限ります。ただし、ドナー候補の方に移植の詳細やリスクをご説明する、ご質問にお答えするなど、専門的な立場からのサポートは私たちが担当させていただきます。
移植から何年経っても。
患者を支える
長期フォローアップ体制。
移植の流れ
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当社団の医師・看護師·コンシェルジュらが丁寧にコミュニケーションを重ね、ご納得いただいた上で東大病院呼吸器外科にご紹介し、次のように進みます。
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東京大学医学部附属病院呼吸器外科のご紹介
同病院の肺移植医と移植コーディネーターから移植に向けて詳細なご説明があります。
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レシピエントの移植適応検査(入院または外来)ドナー候補の方の検査(外来)
レシピエントに対して移植の適応性の検査を行ない、その後※ドナーの検査に進みます。ドナーが不適格となった場合は、別のドナーが必要となります。
※同時の場合もあります。
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レシピエント、ドナー、ともに入院
基準をクリアし移植が認められると、手術に進みます。
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生体肺移植手術の実施
8〜10時間に及ぶ大きな手術となります。世界トップクラスの知見を持つスタッフが、チームを組んで臨みます。
- ドナー、1〜2週間で退院
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集中治療室で約2週間治療後、一般病棟ヘ
手術後は集中治療室(ICU)で術後の管理を行ないます。しばらく人工呼吸器が必要ですが、多くの場合2週間程度で自力で呼吸できるようになります。その後一般病棟に移ります。
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手術後、1〜2ヶ月で退院
感染症や拒絶反応がないか注意深くケアしながら、リハビリテーションを行ないます。退院後を見据えて10種類程度の薬の服用指導や、栄養サポートチームによる栄養・食事指導も実施。通常、移植後1〜2ヶ月程度で退院となります。
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日常生活へ
順調にいけば、手術後約3ヶ月で日常生活に不自由がなくなり、6ヶ月以内に社会復帰できます。デスクワークや家事が問題なくでき、軽いスポーツも可能になります。手術前とはすっかり変わった快適な生活が始まります。ただし、元気になっても定期的な外来通院をお願いしています。今回ご紹介元となる先生と連携し、生涯にわたってサポートしていきます。
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移植後の生活
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移植後は、新たな生活・健康管理がスタートします。手術後1年間は、東大病院で定期的に検査しながら予後をきめ細かくサポート。安定してからは通院の便を考え、ご紹介元の先生と連携し長期的なフォロ一体制を築きます。患者さんとご家族、ご紹介元の先生、東大病院が密にコミュニケーションを取ることで、より健やかな人生を送っていただけます。もちろん、万が一大きな問題が生じた場合は、移植から何年経っていようと東大病院で可能な限り最善の治療が受けられるので安心です。
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長期フォローアップ体制
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生活上の主な留意点
- 免疫抑制剤などの薬を生涯服用していただくことになります。
- ご家庭用の検査機器で肺機能などを毎日チェックし健康管理していただきます。
- 成分の関係で一部食事の制限が生じます。
- 病院で定期的に検査を受けていただきます。
ドナーのみなさまも
ご安心いただけるよう、
生涯にわたって
健康をサポートします。
ドナーの生涯サポート
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この移植支援事業では、患者さんのご年齢上、ドナーはお子様・甥姪世代の方となるケースが非常に多くなります。そこで患者さんからドナーヘの感謝の気持ちをカタチにし、これから長い人生を歩むドナーのみなさまにご安心いただけるよう、生涯にわたって健康をサポートする仕組みをご用意しました。
<移植後のドナーの生活>
◎日常生活に制限はありません。運動もしていただけます。◎肺の一部を切除するため肺活量が15~20%低下します。(日常生活に支障の出るレベルではありません)◎将来肺の病気になった場合、治療法に制限が出る可能性があります。 -
生涯サポートの仕組み
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- 費用の一部で、ドナーの生涯サポート基金を設立。ドナーは一生、基本的に無料で検診を受けていただけます※。
- 肺の健康リスクをいち早く発見でき、安心して暮らしていただけます。
- ※疾患が見つかった場合、治療自体は保険診療で行なっていただけます。治療後の検診は引き続き生涯無料にてサポートいたします。
費用は、日本の移植医療の未来へ。
ドナー生涯サポート基金へ。
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本事業は、日本の移植医療を推進し、次世代に向けて環境を整備する取り組みの一環として行なっています。現在、日本の移植医療は人員不足や設備不足をはじめ数多くの問題を抱えています。一般にはドナー不足(移植希望者に対して臓器提供数が足りない状況)を指摘されることが多いですが、実は仮に臓器提供が十分あっても、専門人材や設備の不足のため手術を必要なだけ実施できないのが日本の現状です。この問題に取り組んでいくために、本事業では移植をお受けになる方に保険診療の費用以外に寄付をお願いしています。どうぞご理解いただきご支援を賜りますようお願い申し上げます。
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費用の使い道
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次世代の人材育成・移植チーム増員・設備拡充のために
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ドナーの健康を一生守っていくために
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医師・看護師・コンシェルジュによるサポートのために
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